そうした中、制度の見直しを求める動きが強まっている。
年金の制度改革は5年に1度行われており、今年はその節目の年にあたる。今国会では「年金制度改革法案」の成立が見込まれ、その中で初めて、「第3号被保険者制度」の見直しに関する規定が盛り込まれた。経済界や労働組合では、「制度そのものを廃止すべきだ」という声が上がり、今後の制度改革に向けた議論が加速している。
みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介・チーフ日本経済エコノミストは、社会保険制度の中立性、女性の社会進出の促進、人手不足といった観点から3号制度の廃止は避けて通れない課題という。
「特に、人手不足が日本経済の成長のボトルネックとなっている現状において、就労を抑制する可能性のある3号制度は、見直しが不可欠です」
「日本経済全体にとってマイナス」
酒井氏は、「3号制度」が今の人手不足の要因の一つになっているという。年収106万円以上などの条件を満たすと、3号制度から外れ自ら社会保険料を納める義務が発生する、いわゆる「年収の壁」が存在する。この「壁」があるため、就労時間を調整するインセンティブが働き、女性の就労意欲やキャリア形成を妨げ、人手不足を深刻化させているという。
「本来ならば働ける人が働けない状態が続くことは、日本経済全体にとってマイナスです」(酒井氏)
大妻女子大学の永瀬伸子教授(労働経済学)は、「すぐにも3号廃止の予定とのメッセージを政府が出すべき」と強調する。
「3号制度は、主婦が小遣い稼ぎ程度のパート労働をする時代につくられました。能力にかかわらず主婦を最低賃金程度で雇用する一方、企業が厚生年金保険料の負担を回避できる、今日に続く当たり前の形成を支えてきました」