本連載の書籍化第6弾!『鴻上尚史の具体的で実行可能なほがらか人生相談』(朝日新聞出版
本連載の書籍化第6弾!『鴻上尚史の具体的で実行可能なほがらか人生相談』(朝日新聞出版

【鴻上さんの答え】

 ゆうこさん。大変な人生を生きてきましたね。「腐った私の性根」と書かれていますが、ゆうこさんの性根はまったく腐ってないと思いますよ。

 それどころか、とても健全な性格だと思います。

 人は誰でも、「誰かの『大切な人』になりたい」「嘘偽りなく私のことを大切に思ってくれているという瞬間を得たい」と願っていると思います。

 ゆうこさんが謙虚なのは、「一度でもよいので」「生涯一度でいいので」と希望していることです。

 願いの強い人は、(強欲とかワガママと言われたりしますが)、「ずっとずっと、私のことを大切にして欲しい」「死ぬまで、私を一番に考えて欲しい」と思ったりしますからね。

 さらにゆうこさんが慎ましいのは、相談の内容が「どうしたら、誰かの『大切な人』になれますか」ではなく、「そう思ってしまう私の性根を、どうしたら変えられますか」ですからね。

 繰り返しますが、ゆうこさんの「誰かの『大切な人』になりたい」という願いは、とても自然なことだと思います。

 でも、それは相手が決めることで、自分がなんとかできることじゃないと僕は思っています。

 自分がどんなに頑張っても、どんなに相手のことを思っても、「嘘偽りなく私のことを大切に思ってくれ」るという保証は残念ながらないでしょう。
 

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