野心のある社外の人間が、フジに出資をして自分が経営しようとしている場合、指名委員会等設置会社になることは邪魔になる。そのためにこうした表現になったのではないかと、冨山は疑っている。いずれにしろ、本気度が見えない。

 それを株式市場は見透かしているのではないか?

旧日航とテレビ局 慄然とする相似形

 冨山は、もっと魅力のある候補者がCEOをする、といった案が出てこないかぎり、難しいと考えている。

 フジが水面下でダルトン・インベストメンツの提案とのすりあわせをしていることは、SBIの北尾吉孝が会見で「清水は例外」と明言したことからも明らかだ。株価が下がっても、北尾が2005年のようにダルトンのFMH株を買い取ってしまえば、ダルトン側のファンドとしての問題は解消する。

 ちなみに、旧日航については同社の管財人が「経営破綻の要因」を第三者委員会に調査させている。その報告書にこんな一節がある。

〈問題先送りの無責任体質は、経営トップから経営中枢部に至るまで会社の経営部門全体にわたって蔓延し、さらには、各現場の従業員の一部にまで波及している。それは、「ナショナル・フラッグ・キャリア」と評されてきたこの会社の役員や従業員の意識の中に、会社に対する誇りとともに「何があっても潰れることはない」という慢心した思いが深く根ざしていたことに因る〉

 運輸省と政界におんぶにだっこで破綻した旧日航と、総務省と政界に依存してきた放送業界。公共の名のもとに、様々な理不尽が社内でまかりとおった様は慄然とするほどよく似ている。フジに限らず、全テレビ局員は、この旧日航の「失敗の本質」についての言葉をかみしめる必要がある。

AERA 2025年5月19日号

こちらの記事もおすすめ 【下山進=2050年のメディア第51回】放送再編の号砲鳴る。SBI北尾吉孝参戦。放送法の緩和も視野
[AERA最新号はこちら]