「かわいそう」と思われることへのカウンターを書きたかった(上村裕香)(撮影:写真映像部・山本二葉)
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 8畳一間のアパートで、10代の女子高校生が難病の母親の介護を行う。散財癖のある父親は、何もしてくれない……。ヤングケアラーでもある女子高生の成長を描いた小説『救われてんじゃねえよ』。筆者で介護経験者の大学院生、上村裕香さんと、小説に登場するお笑いタレント小島よしおさんが、初めて対談した。AERA 2025年4月28日号より。

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上村:小島さんは、子どもたちとの活動をたくさんされています。転機はあったのでしょうか。

小島:僕は出た時から消えるって言われていて、3年連続来年消える芸人ランキング1位でした。世間からの声も面白くねえとか言われることの方が多くて、「そんなの関係ねぇ!」って毒出してるみたいな感じでやってました。それが2011年から子ども向けのライブを始めることになるんですけど、ここにいる子どもたちと一緒に盛り上がろうってやっているうちに、合っているかもって。もしかしたら、そこが転機っていうか、変わり始めたきっかけですね。

上村:お話を聞いていて主人公の沙智の変遷に似ているなと思いました。沙智の高校時代を描いた表題作「救われてんじゃねえよ」では、沙智は尖っていて、周囲の大人たちに正しい言葉をかけられることに反抗している。でも物語が進む中で、沙智も大学生になり、社会人になり、ちょっと大人になって、自分と同じような生きづらさを抱える子どもの映像を見て何かできないかと思うんです。

こじま・よしお/1980年、沖縄県生まれ。早稲田大学教育学部卒。YouTubeチャンネル「小島よしおのおっぱっぴー小学校」公開。著書に『小島よしおのボクといっしょに考えよう』(撮影:写真映像部・松永卓也)

小島:僕は子どもたちのお悩み相談をやっていますが、親の介護をしているけどどうしたらいいかという質問がもしも来たら、この本を薦めようと思いました。お悩み相談って、悩みを受けてから、自分の体験から話すものと、自分なりにいろいろ多分調べたり、後輩とか知っている人から聞いたりするのと、あとは本を参考にして、こういうのあるよっていう答え方をしているんです。やっぱね、自分に体験がないって、なんか言葉に説得力がないんですよ。その点、上村さんの小説はものすごい説得力がありました。

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