かみむら・ゆたか/2000年、佐賀県生まれ。京都芸術大学大学院在学中。「救われてんじゃねえよ」で第21回「女による女のためのR-18文学賞」大賞受賞(撮影:写真映像部・山本二葉)

上村:説得力みたいなものが出ているといいなと思っていたのでうれしいです。本を読んで普段そんなことを見せない人から「自分も実は介護してた」っていうのを聞いたり。そういう語りの初めになる小説っていいと思っているので、そういうものにこの本がなれたらいいですね。

小島:本書では、ツラい時期を救う、その一つの光として「お笑い」が提示されていましたが、いろんな形があると思うんですよね。音楽で救われる子もいれば、こういう本で救われる子もいると思う。あの時、沙智はテレビをつけてたから、僕がたまたま出てきて見たわけで。意外とそういう光って身近なところに転がってるんじゃないかな。絶対に沙智にとってのお笑いみたいなものって、誰にでもあると思うんです。だから、絶対あるぞ!って伝えたい。

上村:誰しも生きづらさを抱えている瞬間って、すごい視野が狭くなっていると思います。チャップリンも「人生は近くで見ると悲劇だが遠くから見ると喜劇である」と言っていて、自分もこれを意識して書いています。どんなに絶望を抱えている人でも、365日泣いてるわけじゃないですから。

(構成/編集部・三島恵美子)

AERA 2025年4月28日号より抜粋

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