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お金がどれくらいあれば幸せを実感できるのか。「幸福の研究」から、幸せになるための要素がわかってきた。AERA 2025年2月17日号より。
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何が私たちを幸せにして、不幸せにするのか。「幸福の経済学」という統計的なアプローチで幸福について考える試みがある。国や研究者は継続的な大規模アンケートをもとに、人々の幸福度を測ることができるようになった。幸福のヒントを専門家に聞いた。
お金がいくらあれば幸せを実感できるのか。青山学院大学の亀坂安紀子教授は言う。
「物がなくて食べ物にも困る状態は、幸せではありません。これは頑健な研究結果として理解されています」
では、家があって、3食を食べられるくらいお金があれば、幸せなのか。
「たくさん稼いでも、長時間労働を強いられたり、過労死不安を抱えたり、パワハラにあったりしたら幸せとは言えません」(亀坂教授)
いくらあれば幸福かは断言できない。だが、内閣府が調べた、世帯年収ごとの満足度が、一つの答えになる。調査によると、世帯年収が増えるほど満足度は上がり、2千万~3千万円の満足度が最も高い。
「人生の3大支出である教育資金、住宅資金、老後資金をはじめ必要な支出を確保したところで、頭打ちしたと考えていいでしょう」(亀坂教授)
もともと、ある一定の年収を上限に、幸福度は頭打ちになるといわれていた。拓殖大学の佐藤一磨教授が有名な研究を紹介する。
ノーベル経済学賞を受賞したプリンストン大学のダニエル・カーネマン名誉教授らは2010年の研究で、「収入が多くなるほど、幸せ度は高くなるが、年収6万~9万ドル以上になると幸福度が上昇しなくなる」と発表、「幸せになるには、約1千万円まで稼げばいい」と広く知られるようになった。だが、23年にカーネマン名誉教授らは研究結果を覆した。
年収1千万円以上になっても、幸福度は伸び続けることがわかった。