そして最後に1位だが、やはり巨人となりそうだ。最も大きな補強は通算166セーブをマークしたライデル・マルティネスを古巣の中日やDeNAなどとの争奪戦の末に獲得できたことだ。昨年も登板した60試合のうち失点を喫したのはわずかに6試合。2点以上を奪われたのは1試合だけで、その安定感は12球団でもトップと言える存在だ。外国人のリリーフ投手の場合、スピードはあってもコントロールは不安定という選手も多いが、マルティネスは制球力も高く自滅するようなこともない。今年で29歳という年齢を考えてもまだまだ余力は十分と見られる。大勢を8回、マルティネスを9回という勝ちパターンが確立できれば他球団の脅威となることは間違いないだろう。

 さらにFAでもソフトバンクで長く正捕手として活躍した甲斐拓也を獲得。盗塁阻止率が少し低下しているのは気になるが、キャッチングなどそれ以外の守備面は年々向上しており、打撃も確実性を増している。サードの坂本勇人が1年を通じて活躍することが難しくなっているだけに、主砲の岡本和真をサードに回して打撃の良いキャッチャーの大城卓三をファーストでスタメン起用するというオプションが増えることはチームにとっても大きなプラスだ。

 昨年鮮やかな復活を遂げた菅野智之(オリオールズ)が海外FA権を行使して退団したのはマイナスだが、楽天を自由契約となった田中将大も獲得している。田中は昨年一軍でわずか1試合の登板に終わったものの、日米通算200勝達成にも強い意欲を見せているだけに今年はある程度戦力となる可能性も高いはずだ。長期的な視点で見れば微妙な印象もあるが、今シーズンの戦力アップという意味ではやはりトップと評価できるだろう。(文・西尾典文)

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。
 

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