総長対話の前、東大安田講堂前では授業料値上げに抗議する集会が開かれた=2024年6月21日、東京都文京区本郷7丁目
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 東大が来年度の入学者から授業料を値上げすることを発表した。同様の動きは他の国立大にも広がりつつある。収支が黒字の大学が多いにもかかわらず、なぜなのか。AERA 2024年10月14日号より。

【図表を見る】「100倍以上も違う!教育大と大規模大との外部資金の差」はこちら

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 国立大学の学費値上げが注目されている。東大は9月、教育環境改善に活用するとして、来年度の入学者から授業料を約11万円引き上げると発表した。授業料は国が定める上限の64万2960円になる。東京科学大(旧・東京工業大)など6大学は既に値上げをしており、一時は広島大や本大も値上げを検討していると報じられた。

 国立大学協会は今年6月に出した声明の中で「(国からの)運営費交付金は減額されたまま、社会保険などの経費の上昇、近年の物価高騰、円安、働き方改革の実現のために大学教職員、学校教員や医師を確保する必要も出てきた」とし、「もう限界です」と訴えた。

 2022年度の国立大学86法人の運営費交付金は1兆786億円で04年度と比べて1629億円(13%)減っている。

 一方で、企業からの受託研究費などの外部資金は2.7倍の8119億円になった。結果、経常収益は1兆円増えて1.4倍の3兆4896億円にまで増えた。各大学の財務情報を見ても、収支は黒字が多い。

黒字の恩恵を感じない

 収入が増え、会計上は黒字なのに、どうしてそんなにお金がないのだろうか。『「大学改革」という病』などの著作がある徳島大学の山口裕之教授は言う。

「外部資金は基本的に使い道が決まっているので教職員の人件費等の固定費として使えません。そこに使えるのは運営費交付金。それが減らされているのが効いています。現在の国立大の財務構造は、基本的な食事をどんどん減らしてサプリメントだけ与え、特定の筋肉だけ筋トレさせるようなものです」

 ただ、それを財務諸表で確認するのは難しい。独立行政法人「大学改革支援・学位授与機構」の水田健輔教授(大学経営)は言う。

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国立大が抱える財務上の課題は、主に2パターン