AERA 2024年10月14日号より

「損益計算書を見て、大学が困っているかどうか判断するのは難しいです。損益計算書から年度内の現金収支の過不足や予算編成の苦労がわかるわけではありません。また、22年度に会計基準が大幅に変わりましたので過去との比較も一概にできなくなりました」

 東大のある研究者は、現場で収入増の恩恵を享受していないと話す。「東大は収入は増えていますが、新規事業も行っていますから同時に支出も増えています」

 86法人全体でみても、22年度の支出は3兆4316億円と、04年度より45%増加。収益は3.4兆円だが、収支の差は580億円しかない。

「収入が増えているにもかかわらず、部局に振り分けられる予算は減り、私たち研究者は、研究費を稼ぐために手間のかかる申請書を作って時間貧乏ですよ」(前出の研究者)

 水田教授は、国立大が抱える財務上の課題には、主に2パターンあると指摘する。

「一つは、基盤的な活動を維持するために毎年度の収支を合わせるのも大変で、施設・設備のメンテナンスを後回しにしたり、人件費を継続的に削って何とか予算編成するケースです。ほとんどの国立大で決算報告書の教育研究経費の支出が、予算に対して抑えられており、経費節減の努力が推察できますが、どれだけ困っているかは内情を聞いてみないとはっきりしません」

 決算報告書を見ると、いくつもの大学で教育研究経費の決算は予算より小さかった。

「もう一つは教育・研究水準のさらなる向上を計画しているが、そうした前向きな支出に充てるお金を捻出するのに苦労しているケースです。これもどのくらい困っているかを公表情報から判断するのは難しい」(水田教授)

(編集部・井上有紀子)

AERA 2024年10月14日号より抜粋

暮らしとモノ班 for promotion
大型セールAmazonプライム感謝祭は10/19(土)・20(日)開催!先行セール、目玉商品をご紹介