写真はイメージ(GettyImages)

 この鉄の備蓄が不十分な状態を“隠れ貧血” または“鉄欠乏症”と言います。日本では、番組(※1) などで大きく取り上げられたこともあり、“隠れ貧血”の方が馴染みのある方も多いかもしれません。隠れ貧血の場合、なんとか日常は乗り切れても、激しいスポーツや女性の場合、毎月のようにやってくる月経などで鉄の喪失が続き、鉄の補充が十分でないと、次第に鉄不足に陥ってしまいます。“隠れ貧血”は、鉄の備蓄がない貧血寸前の状態、つまり貧血予備軍なのです。

 そんな鉄欠乏症について新たな研究(※2) により、アメリカでは鉄欠乏症が広く蔓延しているものの、十分に認識されていない公衆衛生問題である可能性があることがわかったのです。

 この最新の研究は、ボストンのブリガム・アンド・ウィメンズ病院のヤヒヤ氏らにより、8021人のアメリカの成人を対象に、コロナパンデミック前の2017年から2020年の全国健康・栄養調査(National Health and Nutritional Examination Survey)のデータを解析して実施されました。

成人の14%が絶対的鉄欠乏症

 その結果、米国の成人の 14% が、体内の鉄貯蔵量の大幅な減少または欠乏によって起こる絶対的鉄欠乏症に、米国の成人の 15% が鉄貯蔵量は十分であるものの鉄の利用可能性が不十分な場合に起こる機能的鉄欠乏症に罹患していると推定されたといいます。

 また、鉄欠乏症となる割合が高いことが知られている貧血、心不全、慢性腎臓病、または現在妊娠している成人を除外した成人のうち、絶対的鉄欠乏の推定有病率は 11%、機能的鉄欠乏の推定有病率は 15% であったことに加えて、貧血、心不全、慢性腎臓病、妊娠など、鉄欠乏症を検査する潜在的な医学的理由があったのは、絶対的鉄欠乏症の成人の 33% と機能的鉄欠乏症の成人の14% だけであったことも推定されたというのです。

 つまり、アメリカの成人の約3人に1人は、貧血、心不全、慢性腎臓病などがないにもかかわらず、絶対的鉄欠乏症と潜在的鉄欠乏症の2つの状態のいずれかを抱えている可能性があるというわけなのです。

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