日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「鉄欠乏性貧血」について、鉄医会ナビタスクリニック内科医・NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
【病院ランキング】子宮・卵巣がん手術数が多い病院1位~40位はこちら(全4枚)
* * *
貧血は、臨床医療の現場でよく遭遇する疾患の一つです。鉄欠乏は、世界に共通して最も一般的な貧血の原因となっています。今では、スーパーマーケットやドラッグストアなので、鉄入りの商品やお菓子、鉄のサプリメントなどが多数揃えてあることに加えて、鉄欠乏性貧血や隠れ貧血に関する記事の配信や番組の放送のおかげで、貧血という言葉を聞いたことがある人の方が、多いのではないでしょうか。
鉄欠乏性貧血とは、「体内で鉄が不足した結果、全身に酸素を運ぶヘモグロビンを生産できなくなり、体内の組織が酸欠になった状態」です。体内の組織が酸欠状態になることで、頭痛やめまい、耳鳴りやふらつき、易疲労感や倦怠感などを引き起こすと言われています。他に、酸素が欠乏することによる代償作用として、息切れや動機、頻脈といった症状が現れます。また、鉄を多く含む赤血球の量が減ることによって、顔色が悪い状態や、眼瞼結膜の蒼白などを引き起こすのです。
しかしながら、鉄欠乏性貧血であっても、多くの人は無症状だと言われています。外診療の現場でも、「最近、とても疲れやすくて‥。貧血かもしれない」を主訴に受診される方がいらっしゃる一方で、「健診を受けるたびに、貧血だと言われるけれど、症状が全くないから放置していました」とおっしゃる方も、意外と多いのが現状です。
よく聞く隠れ貧血とは?
私たちの身体の中で、酸素を運ぶという重要な役割を担っている鉄。しかし、鉄は血液の中だけに存在しているわけではありません。血液中にあるのは、体内全体に存在する鉄の 60~70 %であると言われており、残りの 30~40 %はフェリチンというたんぱく質と結合し、肝臓や脾臓などに蓄えられています。つまり、鉄が不足してしまわないように、備蓄されているというわけです。