「自分にも加害性があると思っている」と語る高橋一さん(撮影/小財美香子)

 わざわざバンドで曲をリリースするのは、「前例を作りたい」という気持ちもあるからです。僕らみたいなバンドがチャリティー・シングルを出すことで「こういう活動をしても大丈夫なんだな」と感じてもらえたらなと。パレスチナ支援のイベントをやろうという話も出ているし、草の根活動的に続けていくしかないだろうなと今は思っていますね。

――インディーズレーベルだから行動を起こしやすいところもあるんでしょうか?

 そうかもしれないですね。「それはかつてあって2024」はレーベルとバンドの共同出資で作ったんですけど、そこにもいろんな伏線があって。コロナ禍のときに、DIYでレコーディングするスタイルに変えたんですよ。レコーディング機材をちょっとずつ買い集めて、録音やミックスも研究して。だから今回も(予算を抑えて)制作できたし、売り上げから制作費を抜いたりせず、楽曲で得た売り上げの全額を支援に回すことができるんです。

――思い出野郎Aチーム、マコイチさんのこれまでの活動が、今回のチャリティー・シングルにつながっているんですね。

「それはかつてあって」ほど直接的ではなくても、反差別的なメッセージや、社会に異を唱えるようなテイストをこれまでも少しずつ楽曲にとり入れてきて「どこまでいけるのかな?」みたいなところもあったし、マネージャーと「引かれるんじゃね?」と話したこともあるんですが、リスナーの皆さんは好意的に受け入れてくれて。もちろん「そんなメッセージは入れないでほしかった」という人もいると思いますし、正直に言うとビビってるところもあるんですけどね。日本の音楽シーンは社会的なことと、踊って楽しむことを切り離しがちなんですが、どっちもある状態が自然だと思うんです。あと、さっきも言ったように「関係ない」と言える人はいないはずなので。正義感で動いているというよりは、自分にも加害性があると思っているからで。

――マコイチさんご自身に加害性がある、と。

 僕は父母ともに日本国籍で、シス男性(※)で、大人と言われる年齢。この国では明らかにマジョリティーなんですよね。それは自分で選んだ属性ではないけど、社会的な立場を考えると、どうしてもマイノリティーに対する加害性をはらんでしまう。だからこそ差別などの社会的な問題に対して「しっかり発言しないとダメでしょ」と思うんです。自分たちが言わないと変わらないので。自分を責めながら生きる必要はないけど、自分が持っている加害性を自認することは必要なんじゃないかなと。(※生まれ持った性別が男性で、自分自身も男性だと認識している人)

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