高橋一さん率いるバンド、思い出野郎Aチームは今年8月、パレスチナ支援を目的としたチャリティー・シングル「それはかつてあって 2024」を発表した(撮影/小財美香子)

 本を読んでパレスチナの歴史や現状を理解しつつ、ようやく重い腰を上げて、「バンドとしても直接お金を送れるようなアクションを起こしたい」と思うようになり、チャリティー・シングルをリリースすることになりました。

――ガザの報道を直視できない、という人も多いと思います。そういうときは“しばらくニュースを見ない”など、距離を取ることも必要ですよね。

 メンタル的にはそうですよね。ただ、日本も間接的に加担しているわけだし、関係ない人はいないと思うんですよ。今のガザで起きているのはほとんどが一方的な虐殺だし、世界規模で止めなくちゃいけない。よく「一般市民がやってもしょうがない。国レベルでやることだ」という意見があるんですが、僕としては「一般市民の連帯こそが本当に必要なのでは」と思っていて。アメリカを筆頭に多くの大国や世界的大企業がイスラエル支援だし、世界中がパレスチナの人々を見殺しにしているような状況で少しでも手を差し伸べられるとしたら、シチズンシップしかないんじゃないかなと。

政治的なメッセージを発することについて

――そのためにもアーティストやミュージシャンがアクションを起こすことは、とても大事だと思います。日本のミュージシャンは、社会的、政治的なメッセージを避ける傾向があると言われますが、そのことについてはどう思いますか?

 僕らはインディーズレーベル(カクバリズム)で活動しているので、メジャーシーンのことはあまりわからないんですが、仮に政治的なメッセージを出したいと思ってもリスクを恐れて自己規制することは多いのかもしれませんね。ただ“やらないほうが安パイ”みたいな状態がずっと続いているのは確かだと思います。パレスチナについても、何もやらず、何も言わなければ、批判はされない。日本では“やらないこと”が普通になってしまっているので。一方で、僕らのバンドはこれまで社会的な活動や発言をしていることもあって、数は少ないですが何か主張を出すと「どうして他の問題に対しては動かないんですか?」といった意見も届いたんです。何もやらなければそういう声もあがらないですからね。もちろん他者が“やらないこと”を責める気も、権利もないですし、自分が何をやるかでしかないのですが。

――社会的なアクションを起こすことで、仕事が減るのでは?という心配もありますからね。私もそうですが……。

 それもわかります。チャリティー活動などは実質的な労力や、時間、金銭的な負担がかかることもあると思います。でも別に人生すべてをなげうつ必要はなくて、できる範囲でできることをやればいいと思うんですよね。行動する人の絶対数が増えれば確実に変わるはずなんですが、「そんなの意味ない」という無力感だったり、「自分が損するんじゃないか」という空気だったりが広がっているのかなと。パレスチナ以外にも酷い問題がそこらじゅうに山積していますが、各自が自分なりに社会に目を向けられたら良いのかなと思います。

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