ソウルバンド・思い出野郎Aチームの高橋一さん(撮影/小財 美香子)
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 2023年10月以来のイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘により、パレスチナ側の死者数が4万人を超えた。そのうち1万6千人以上が子どもとされ、ガザ地区では今なお凄惨なジェノサイドが起きている。停戦のめどは立たず、被害が拡大し続けている状況を受け、世界各国のアーティストが停戦を訴えたり、ガザへの寄付を募るアクションを起こしたりしていることをご存じだろうか。

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ミュージシャンによるパレスチナ支援を目的とした活動

 日本でも、いとうせいこう、曽我部恵一、七尾旅人、春ねむり、マヒトゥ・ザ・ピーポーなどがガザの状況を受けた内容の楽曲を発表。パレスチナを支援するライブやイベントもたびたび開催され、坂本美雨がパレスチナ・ガザ人道支援の義援金を集めるためのオークション企画「Watermelon Seeds Fundraiser(ウォーターメロン・シーズ・ファンドレイザー)」を立ち上げるなど、連帯の輪が少しずつ広がっている。ソウルバンド“思い出野郎Aチーム”のアクションもその一つだ。

 思い出野郎Aチームは今年8月、パレスチナ支援を目的としたチャリティー・シングル「それはかつてあって 2024」を発表。このシングルは、関東大震災における朝鮮人虐殺の歴史や入国管理局(現・出入国在留管理庁)による難民、移民への人権侵害をテーマにした楽曲「それはかつてあって」(2019年)を新たにレコーディングしたものだ。

 バンドリーダーの高橋一(通称“マコイチ”)は、ライブのMCでさまざまな差別への反対を訴え、入管難民法改正案に反対する国会前のデモでスピーチを行うなど、以前から社会的なメッセージを発してきた。「社会の問題と無関係なところで音楽は作れない」というマコイチに、チャリティー・シングルのリリースに至った経緯、そして、“音楽と社会”について聞いた。

――思い出野郎Aチームは今年8月、パレスチナ支援を目的としたチャリティー・シングル「それはかつてあって 2024」を発表しました。この曲は2019年にリリースされた「それはかつてあって」の再録バージョンだそうですね。

「それはかつてあって」はもともと、関東大震災における朝鮮人虐殺に対するメッセージがもとになっています。今もそうですけど、東京都知事が(朝鮮人犠牲者追悼式典に)追悼文を送らなかったり、歴史修正的な言説が増えてきたりした時期だったんですよ。『九月、東京の路上で~1923年関東大震災 ジェノサイドの残響」(加藤直樹著/ころから刊)という本を読んで感銘を受けたり、当時の状況を調べたりしていくなかで、「このことを曲にしたい」と思ったのが最初でした。

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森朋之

森朋之

森朋之(もり・ともゆき)/音楽ライター。1990年代の終わりからライターとして活動をはじめ、延べ5000組以上のアーティストのインタビューを担当。ロックバンド、シンガーソングライターからアニソンまで、日本のポピュラーミュージック全般が守備範囲。主な寄稿先に、音楽ナタリー、リアルサウンド、オリコンなど。

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