ある日、知らない人が名簿をもって自宅を訪ねてきた(写真はイメージ/gettyimage)
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 PTA活動にはさまざまな課題がある。PTAの入り口でもあり、最も大きな問題のひとつが「加入」だ。「任意加入」団体であるにもかかわらず、「強制加入」が常態化しているPTAはいまだに少なくないという。

【550人アンケート】ズバリ、PTAって必要ですか?

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入学説明会で「会員のみなさま」

 昨年末、長男の小学校入学説明会でのことだった。

 京都府に暮らす中井亮さんは、手渡された文書に、おや、と思った。

 文書はPTAの本部役員や地区ごとの地域委員を決めるお知らせで、「会員のみなさま」と書かれていた。

「PTAの会員にまだなっていないのに、役員の選出を求められるなんて。順番としておかしいと思いました」(中井さん)

 入学すると、今度は「2024年度学級委員並びに専門部員の選出について」という文書が届いた。「PTA会員様」と書かれたこの文書によると、「4月の授業参観の後でクラス役員などを決める」「役員の免除は基本的になし」と書かれていた。

“免除なし”とは、つまり全員加入が基本、ということだ。

 中井さんは衝撃を受けた。

「テレビなどで強制的にPTAに加入させられる学校があるのは知っていて、『地方の学校は大変だなあ』くらいに思っていた。まさか、都市圏にある地元の学校がそうだったなんて」

首相も「入退会は保護者の自由」

 PTAは任意加入の団体だ。本市の保護者がPTAに対して強制加入は不当として会費の返還などを求めて争った「熊本PTA裁判」で、2016年に熊本地裁は「PTAは入退会自由の任意加入団体である」という前提を示している。昨年3月の参議院予算委員会では、岸田文雄首相が「PTAは任意の団体であり、入退会は保護者の自由」との見解を示した。

 AERA dot.編集部が行ったPTAに関するアンケートには、550件の回答が寄せられ、回答者の実に6割が「強制加入」を経験していた。

 中井さんの学校では、PTAやその活動についての説明や入会意思の確認を行わないまま、保護者を自動的に「PTA会員」として扱っていた。

 中井さんは今年6月に開催されたPTA総会に出席。いくつかの法的根拠を挙げて「強制加入」の問題を指摘した。

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PTAの役員が自宅に「ごめんください」