「個人情報の提供は法令違反」
個人情報保護法違反ではないかと、市教育委員会に問い合わせたところ、市教委はこんな趣旨の回答をした。
“学校は入学式の前に入学説明会を開いた。その場で学校がPTAに個人情報を渡す旨の文書を配布し、保護者はそれに了承した”
そうした文書を受け取った記憶はなかったため、トシオさんは市に対し、文書の公開を請求。すると、市教委の担当課長から「謝罪の手紙」が届いた。
「そんな文書はなかったということです。手紙には謝罪とともに、学校が行ったPTAへの個人情報の提供は法令違反なので校長を指導する、とありました」(同)
入会届のある学校は1割
「入会届を整備すべきではないのか」
トシオさんは子どもの学校だけではなく、PTA問題に詳しい市議会議員を通じて、市教委にも働きかけた。10月になってようやく、個人情報の提供について、学校は同意書を作成。それに追随するかたちで、今年の3月末になって、PTAも入会届を整備した。
トシオさんは、市内の全公立小中学校のPTAに入会届があるかについて、文書の公開請求を行った。
「入会届があったのは約1割で、ほとんどの学校に入会届がありませんでした。PTAの規約に『入学したらPTA会員になる』という内容が堂々と書かれている学校もありました」(同)
PTA問題に詳しい大塚玲子さんは「入会届をきちんと整備することが大切」だと指摘する。
「入会届を出すことによって、本人の意思に基づいてPTAに入ることで、PTAがきちんと機能する。個人情報が保護者に無断で学校からPTAに流出するようなことも起こらない」(大塚さん)
PTA加入の入り口となる「入会届」ひとつとっても、さまざまな課題をはらんでいる。AERA dot.ではPTAにまつわる諸問題を取り上げていく。
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)