「その場にいた役員たちはぼんやり私の説明を聞いていて、反論はいっさいなかった。けれど、行っていた強制加入については誰も謝罪しませんでした」(同)
結局、役員は「入会届の整備には時間がかかるが、進める」と認めて、総会は終了した。現在、中井さんは推移を見守っている。
校長の反対で挫折
記者も地元の小学校PTAで会長をしていたとき、入会届の整備に取り組んだが、校長に反対され、結局、実現しなかった。
校長は入会届の必要性に理解を示してくれたが、「校長会の意向には逆らえない」という。
校長会のメンバーである周辺の小中学校長にも理由を尋ねると、入会届を整備することで会員が減少し、PTAの規模が縮小してしまうのではないかと口々に訴えた。それだけ学校はPTAを頼りにしていたのだろう。
特に、「入会届は整備しない」という校長会会長の方針は絶対で、一校長としては、それに従わざるを得ないという。なので、記者が所属したPTAではいまだに強制加入の状況が続いている。
自宅に知らない女性が訪問
強制加入には、「個人情報」の問題も付きまとう。子どもの住所や氏名などの個人情報が、保護者の同意を得ないままにPTAに渡っていることがあるのだ。
大阪府在住のトシオさん(仮名、30代)は、子どもが小学校に通いだした昨年4月、こんな経験をした。
「ごめんください」
ある日、自宅にひとりの女性が訪れた。「PTAの地区委員」だという。妻は、「なぜ、見知らぬ人が自宅の住所を知っているのか」と驚いた。
女性から集団登校の登校班の名簿を手渡された。そこにはPTAに伝えた覚えのない子どもの名前や年齢、住所、連絡先などがびっしり並んでいた。
トシオさんが入会の意思を示した覚えはないのに、「個人情報」が学校からPTAに渡った、としか考えられなかった。
「入学式ではPTAの人が出てきて、『PTAの加入は任意ですけれども、例年みなさん参加しております』みたいなことをぼそっと言って終わり。入会の意思確認はされませんでした。『説明がなさすぎる』とはっきり言っている保護者もいました」(トシオさん)