僕が演じることがメッセージになる
「『RENT』は20代の若者たちの話だから(笑)。確かに当時も40歳を超えていた人もいましたけど。英語で演じるにしても、アジア圏から英語を喋れるキャストを集めるのかなと思っていたんです。キャスティングを見て、本当に僕がブロードウェイの海外キャストの中に入ってやるんだと気が引き締まりました」
表現するのは、「英語を話す日本人が演じるマーク」ではなく、〝米国人〟のマークだ。この舞台で観客たちに「衝撃を受けてほしい」と話す。
「僕が英語で海外キャストと演じることが、何かのメッセージなることは間違いない。大口を叩くわけではありませんが、新しい形ですし、チャレンジングなことだと伝わるはずです。僕の中には『すごいだろう』という思いと、『本当にこれをやらなければいけないんだ』という思いが同時にあります。『このミュージカルを伝えることが使命』と勝手に思っています」
何かを求め続けてやってきた
出演が決まってから1年、「RENT」に向きあってきた。これほど長く1作品に注力したことはない。
「今の自分をつくった、紛れもない大切な作品」に出演するからこそ、ふと思う。終わったあとの自分はどうなっているのだろう、と。
「あの初演からいままで、『RENT』をやらなかったからこそ、何かを求め続けてやってきたんだろうって思うんです。だから、この後に何をやりたいのかと言われても、今は何も浮かびません。自分でつくるほうが早いのかな……。でも、正直、しばらくは何もやりたくないですね」
それほどの思いをかけたミュージカル「RENT」を経て、山本耕史はどこへ向かうのか。再び、彼の人生が大きく動き出すのか、目が離せない。
(構成・ライター・坂口さゆり)