ロングインタビューに応じた、俳優として活躍する山本耕史さん(撮影/写真映像部・松永卓也、hair & make up/佐藤友勝 styiling/笠井時夢) 
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 山本耕史は、いったい何人いるのだろうか。二つの意味でそう思う。ひとつは、ドラマに映画に舞台と、彼の顔を見ない時がないということ。もうひとつは、俳優としての確かな演技力だ。主役から小さな役までどんな役でも、その人が確かにそこに生きている。

【写真】26年前の舞台で山本さんが受けた「衝撃」とは

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芸能生活47年、0歳からモデル

 芸能生活47年。0歳からモデルをはじめた。10歳で日本初演の「レ・ミゼラブル」で初舞台を踏んだ。

「気づいたときにはこの仕事をしていたので、仕事は学校へ行くのと同じ。生活の一部でした。だから、『演技でやっていくんだ』と思ったことはありません。はじめは演技とは、言われたことをやって、うまくできたら褒められる、ということだったんです」

 21歳のとき、人生が変わるほどの出会いが降ってきた。それが、日本版初演となったブロードウェイミュージカル「RENT」だった。ニューヨーク・イーストヴィレッジを舞台に、現実にもがき苦しみながらも懸命に生きる若者たちを描いた群像劇だ。山本が演じたのは、映像作家志望のマークだった。

 共演者のほとんどは、ロック系のミュージシャン。元ロックミュージシャンのロジャー役が宇都宮隆(TM NETWORK)、ゴーゴーダンサーのミミはTSUKASA(KIX⁻S)、ジョアンヌ役に坪倉唯子、ベニー役はKONTA(BARBEE BOYS)だった。

全員の勢いが外を向いていた

「僕自身は音楽活動もやってはいましたが、俳優は僕だけ。大丈夫かなと不安でしたが、稽古が進めば進むほど、みんなが役にしっくりハマり始めたんです。どんな作品にも稽古が煮詰まる瞬間が必ずあるんですけど、この時はその記憶がありません。

 ミュージシャンだからこそ、こだわりが違ったのかもしれませんが、それぞれがざっくばらんに『これカッコいいじゃん』って、全員の勢いが外を向いていた。俳優たちで舞台をつくるときは内側を向いて手を取り合うイメージだったので、まったく違いました。『俺の見せ場はココだ』とか、『俺はあいつの歌は聴かないわ』『あいつの歌は許せない』とか、みんな尖りまくってましたし。強烈な体験でした。

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「こんな表現があるのか」の衝撃