実績なら断トツの甲斐
今季中に国内FA権を取得予定の捕手は大城だけではない。昨季38年ぶりの日本一の原動力になった阪神・坂本誠志郎、ソフトバンクの黄金時代に扇の要となり、侍ジャパンも常連の甲斐拓也、攻守で能力が高い中日の木下拓哉と、レギュラークラスがズラリ。今オフは「捕手が大豊作」のFA戦線となる。
チーム成績を含めた実績で言えば、4捕手の中で甲斐が抜きん出ている。10年の入団時は育成ドラフト6位という下位指名だったが、13年オフに支配下登録され、17年に正捕手の座をつかむと、4年連続日本一に大きく貢献。18年に広島と対戦した日本シリーズでは「甲斐キャノン」と形容される強肩でシリーズ新記録となる6連続盗塁阻止し、育成出身初のMVPを受賞した。
今オフにFA権を行使するか注目されるが、ソフトバンクを取材する記者は「残留の可能性が高いと思います」と語る。
「育成でプロの世界に入ったソフトバンクに感謝の思いがありますし、今年は戦力が整ってチームは春先から首位を快走している。甲斐もやりがいを感じているでしょう。他球団からすれば、推定年俸2億1000万円をどう判断するか。名捕手であることは間違いないですが、近年はマネーゲームを敬遠する球団が増えています。もしFA権を行使したとしても、獲得に乗り出す球団は限定されるのでは」
FA権を行使した選手の獲得に各球団が乗り出す材料として、年俸は重要な要素となる。昨オフに山崎福也(日本ハム)がオリックスからFA権を行使した際、慰留に努めたオリックスを含めて6球団による争奪戦となった。取材した記者は、こう分析する。
「山崎は先発の柱として2ケタ勝利できる力がありますが、推定年俸6000万円で獲得球団は人的補償が発生しないCランクだったことが、争奪戦となった大きな理由でした。人的補償が発生すると若手の成長株やチームに貢献したベテランが流出するリスクがあるので、獲得のハードルが一気に上がる。この観点でいくと、今オフにFAで権利を行使した場合、争奪戦に発展する可能性が高いのが阪神の坂本です。昨オフに推定年俸2800万から7000万円と倍額以上のアップを勝ち取りましたが、割安に感じるほど捕手としてのスキルは高い。Cランクなので他球団は獲得に動きやすいです」