J1でも旋風を巻き起こしている町田の黒田剛監督
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 混戦模様の2024年のJ1リーグ戦。桜の季節は瞬く間に過ぎ去ろうとしている中で、序盤の“滑り出し”に注目が集まったのが、FC町田ゼルビア、ジュビロ磐田、東京ヴェルディの昇格組3チームである。

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 開幕から台風の目となったのが、町田だ。高体連から異例の転身となった黒田剛監督のもとでJ2を制覇した昨季の戦い方をベースに、オフに大型補強を敢行してチームをブラッシュアップさせた。戦い方はシンプル。球際の強さに拘った上で、奪ったボールをオ・セフン、藤尾翔太の前線に素早く預け、弾き返されてもこぼれ球を拾う「型」を徹底。相手陣内でタッチラインを割れば、ロングスローを放り込んで圧力をかけ続ける。Jリーグのスタッツによると、第8節終了時点でのパス総数2410本は、トップの新潟(5301本)の半数以下であり、J1の20チーム中で最も少なくなっている。

 その戦い方を「アンチフットボールだ」と批判する声も聞かれるが、決して自陣に引きこもる訳ではなく、バイタルエリアへの侵入回数の多いエキサイティングなサッカーだ。開幕戦でG大阪(△1-1)を相手に退場者を出すまではほぼ完璧なゲーム運びを見せると、第2節から名古屋(○1-0)、鹿島(○1-0)、札幌(○2-1)、鳥栖(○3-1)と4連勝。完成度の高い広島(●1-2)に初黒星を喫したが、自分たちの戦い方を疑うことなく川崎(○1-0)に勝利。第8節でスタイルの近い昨季王者の神戸(●1-2)に競り負けたが、それも紙一重の差だった。8試合を終えて勝点16(5勝1分け2敗)の3位は、上々すぎる滑り出しと言えるだろう。

 だが、問題は“ここから”だ。第一に、U-23アジアカップ参戦のため、前線の藤尾に加えて、スピード豊かなドリブル突破を武器にサイドで違いを見せていた平河悠が第8節から欠場し、最大で5月6日の第12節まで不在。その代わりとしてバスケス・バイロン、ナ・サンホと人材はいるが、選手交代も含めて戦い方が制限されるのは間違いない。そして、それ以上に心配なのが「連戦」と「暑さ」。ヨハン・クライフ曰く「ボールは疲れない」が、90分走り続けるのは想像以上に困難なこと。

 今後、梅雨を迎え、日本の夏特有の蒸し暑さ、そして近年の異例とも言える酷暑の中では、フィジカル要素の強い戦い方を続けるのは至難の業だ。どこまで球際でのアドバンテージを取り続けることができるか。さらに、昨季途中からのJ2クラブ同様に、意図的に「(自分たちが)ボールを持たされた」際にどう対応するか。どこまで自分たちを信じ、どこまで愚直に戦い続けられるかだろう。

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