「ここには大学側も口を出してこない」(白川さん)という、キャンパス内の“治外法権エリア”。だめライフ愛好会には部室がないため、調理器具や工具などの持ち物はブルーシートをかぶせてここに置いている。鍋パーティーに使うIHヒーター2台のうち、1台は盗まれ、1台はコードを紛失したようで、白川さんは困り果てていた

「創造的な逸脱をやりたい」

 不要不急なことだからこそ、全力で楽しむ。そんな学生ならではの豊かさと特権を奪われたことへの、せめてもの逆襲なのかもしれない。

 同様の活動は他大学にも広がっているようで、Xのアカウントを見る限り、一橋大、早稲田大、筑波大、学習院大、立命館大など、ざっと40以上の大学のだめライフ愛好会が確認できる。白川さんによると、一人~数人で活動している会が多く、コミュニティーの規模としては、東大は大きい部類に入るそうだ。

 会の概要について一通り話を聞き終えたところで、気づけばブルーシートの上では、“常連”と新入生たちが話を弾ませていた。

「未来の活動はみなさんにかかっていると言っても過言ではない。今年何がしたい?」

「創造的な逸脱をやりたくてここに来たんです」

「そんな難しいこと言われても分からん」

「太めの木に片っ端からしめ縄を巻いてお供えをすることで、心霊現象を引き起こしたい」

「アニミズムだと、それぞれの木に(神が)宿ってるからね」

「じゃあここに前方後円墳を造ろう」

「僕は地形を作り出したいです」

「あー、河岸段丘掘るか!」

 めくるめく“だめ”の世界を前に、目をキラキラさせて妄想を膨らませる新入生たち。だが、そもそも「だめライフ」の定義とは何なのか。

「途中から考えるのをやめたんですけど、初期のころみんなで話していたのは、『社会の常識や規範からずれた行動をする』というものです。だめ連(※労働と消費を中心としない生き方を模索・提唱するため、1992年に神長恒一氏とぺぺ長谷川氏が設立した集団)のノリは引き継いでいると思います」(白川さん)

「世の中の役に立つのはしんどいから、高等遊民としてだらっと生きたい」「社会が東大生に求めているものから逸脱したい」と切に願う白川さんは、昨夏、神長氏をゲストに招いた「就職座談会」に参加。どうすれば就職しないで生きられるか、イベント参加者たちと知恵をしぼったという。

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人生における“あそび”を大切にしたい