キャンパスの片隅に広がる大根畑。案内してくれた白川さんは、「トウが立ってきたから、そろそろ収穫しないといけないんですけど……」と、少しめんどくさそうにつぶやいた

キャンパスの空き地で野菜を栽培

 それを機に、昨年5月に東京大学だめライフ愛好会を結成。「学費の元を取るためにキャンパスを有効活用する」というもくろみもあり、面白そうなことを片っ端から始めてみた。

 最初に挑んだのは、空き地でのさつまいも栽培だ。無事に収穫し、焼き芋パーティーにこぎつけたものの、畑ができて半年ほどたったある日、「当局」(白川さん)こと大学の学生支援課によって畑の周りにコーン標識が設置され、締め出された。今や、畑は厳重なフェンスで囲われ、「耕作禁止」の張り紙もされているが、白川さんたちは抜け道を作り、懲りずに大根を育てている。

 食料生産としては、「外来種だらけの駒場池でザリガニ釣り」企画も功を奏した。講義をサボって約1週間釣り続け、2千~3千匹ほどを確保。ザリガニの味は「エビやカニからうま味を抜いた感じ」だが、にんにくじょうゆで炒めたり紹興酒で蒸したりと、味つけ次第では伸びしろがあるという。一部はコンポストに入れて肥料にし、さつまいも畑にまいてみたが、とにかく臭いがひどく、これは失敗に終わった。

ペットボトルプランターでも食料生産。雑草に見えるが、一応クレソンが育っている

 東京大学だめライフ愛好会に、正式なメンバーは存在しない。いるのは“常連”だけだ。「組織化はめんどくさい」「誰でも気軽に関われる会にしたい」という理由から、“主催さん”と呼ばれている白川さんがイベントの告知をし、その時々で集まりたい人が集まるスタイルをとっている。

 ここで、世の大人たちが疑問に思うであろうことを聞いてみた。東大という日本最高峰の大学に合格する頭脳がありながら、なぜ「だめ」をライフワークに活動しているのか。白川さんに尋ねると、「コロナ禍がトリガーの一つになりました」と返ってきた。

「入学したら活発なサークル文化を楽しもうと思っていたのに失われてしまったし、不要不急の活動は許さないという空気の中、大学内が漂白されたように感じたんです。だからこそ、コロナが明けた今、猥雑(わいざつ)で無秩序なものを取り戻して、もう一度学生の居場所を作りたい。思い描いていたキャンパスライフはかなわなかったけど、自分で描き直しているところです」

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「だめライフ愛好会」は40以上の大学に