新歓鍋パーティー会場のブルーシートに、会の“常連”や新入生が集まってきた。写真を撮らせてほしいとお願いすると、いっせいに顔を隠す一同

「世の中が思っているほどいい子じゃない」

 取材も佳境に入ったところで、そろそろ鍋が始まりそうな雰囲気に。「この記者いつまでいるんだろう……」という学生たちの眼差しを感じ、いったん退席した。20時前に再び校舎裏をのぞくと、ちょうど撤収作業を終えたばかりの白川さんと“常連”たちの姿があった。

 せっかくなので、渋谷駅まで徒歩約20分の帰り道に同行させてもらう。道中、「次は学内で養蜂をしてみたい」とニホンミツバチとセイヨウミツバチの生態の違いを語りあったり、松濤の高級住宅街に立ち並ぶ家々を眺めては「我々は資本主義社会の中で搾取され、食うに困ってさつまいもを育てる者たちだ」と連帯を確かめあったり、彼らなりの青春を嬉々として謳歌(おうか)する姿がまぶしかった。

東大生=真面目な優等生というイメージかもしれませんが、人生における“あそび”を大切にしようとする学生は意外と多いと思いますよ。みんな、世の中の人が思っているほどいい子じゃないです(笑)」

別れ際、白川さんはそう言い残すと、「ICカードをなくしたので切符を買ってきます」と、渋谷駅の人波に消えていった。世間体やエリート街道には目もくれず、誇り高く「だめ」を貫く。そんな風変わりな東大生に、何かと世知辛い現代社会を軽やかに生きるヒントを教わった気がした。

(AERA dot.編集部・大谷百合絵)

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