会の“常連”たち5、6人から1000円ずつカンパを募ってIHヒーターを購入し、無事に鍋パーティーを開催。帰り道、常連の一人は、「やっぱ咲きたてが一番甘い」と桜の花をむしゃむしゃ食べていた(写真:白川さん提供)

 日本の受験エリートたちが集う東京大学に、「だめライフ愛好会」なる団体があるのをご存じだろうか。「だめ」をライフワークに――こんなモットーを掲げ、Xで日々発信を続けているのだが、投稿をさかのぼっても、活動内容は大学構内での大根栽培くらいしか確認できない。誰が、どんな目的で、何をしているのか。謎に包まれたその実態を探るべく主催者に取材を申し込むと、東大であえて「だめ」を追及する、意外な理由が見えてきた。

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 取材の待ち合わせ場所として指定されたのは、東京大学駒場キャンパス内の、とある校舎裏。約束の時間を20分過ぎて、「東京大学だめライフ愛好会」を主催する、教養学部の白川さん(仮名、20代前半)が焦った様子でやってきた。

「すみません、この後ここで新歓の鍋パーティーを行うので、ブルーシートを取ってきます!」

 そう言い残すと、さっそうと走り去っていった。

 引き続き、待つこと10分。戻ってきた白川さんはいそいそとブルーシートを広げはじめたが、シートの一部がビショ濡れだったり、炭酸飲料のペットボトルを放り投げては一人慌てたりと、早くも“だめ”っぷりが垣間見える。

 取材ということで校舎内で応じてもらえるのかと思いきや、そんな素振りはないので、記者もブルーシートの上にお邪魔して話を聞くことにした。

 白川さんによると、会の歩みは、ざっくりと以下の通りだ。

 昨年春ごろ、中央大学のだめライフ愛好会が、自動販売機の下に落ちている小銭を拾う活動をX上で報告していた。それに触発された白川さんは、仲間うちで東大キャンパス内の自販機を回って“小銭あさり”を決行。500円玉を落としても放っておく人がいる現実に驚きつつ、計1000円以上を回収した。

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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「だめ」をライフワークにする理由