当時の私が予測できなかったのは、ドナルド・トランプはそれだけでは満足しなかったことです。政治の世界でも承認欲求を発揮して、政治に参入したのです。その結果、みんなが苦しんでいます。
優れた大統領やリーダーになるには、良い人格が必要なのです。その点、トランプは考えられる限り、最悪の人格を保有しています。リーダーとして、これ以上考えつかないほど最悪です。自己中心的で嘘つきで、公共心はありません。何事も個人の利益になるかどうかで判断して、公の利益は考えもしません。そんな人に資格はありません。
些細なことでさえ、真実を語りません。たとえば、就任式に群衆がどれくらい集まったかということも、本当のことは言いませんでした。オバマの就任式のほうが多くの人を集めたことに、我慢ならなかったので嘘をついたのです。
とても縁起の良い兆しとは言えませんが、米国政治や米国社会でとても心配なのは、人々の関心が薄いことです。彼のことを好きな人も大勢いました。また彼の周囲には、カルト的に崇拝する人もいました。どんな振る舞いも言い訳も容認しました。2020年の大統領選挙の結果を受け入れるのを拒み、平和的な権力の移譲を妨げるべく暴力に訴えました。基盤となる民主主義制度に対する、あれ以上の攻撃は考えつきもしません。ですが、米国人の3分の1ほどが、彼の行動を正当化しています。
これが、米国社会が抱える病理の一部です。すべてが彼の責任とは言いません。異なる類の憤慨をため込んでいるとも言えますが、歴史上この特定の時間に、このような他に例を見ない悪質なリーダーが出現したのは、運のなさと言えます。