フランシス・フクヤマ氏

 次は「優越願望」と呼ばれる現象です。これもギリシャ語ですが、「他者よりも多くを欲する」という意味です。名誉や栄光をより多く求めることです。

「尊重されたい」と願う人間心理の同じ部分ではありますが、異なる二つの形態があるのです。ある人は平等に扱われたいと願い、他のある人は、別の人よりも優遇されたいと願うのです。このどちらも、民主主義社会では起こり得るのです。

 現在起こっているのは、社会のエリート層から尊重されていないと感じる多くの人が、ポピュリスト政党に投票しているということです。米国や欧州、あるいはその他の国々で目にしているのは、大都市在住で教育水準の高い人々は、よりリベラルな傾向にあるということです。高い教育の影響によって、自分と同程度の教育を受けていない人、あるいは小さな街や田舎に暮らす人などを下に見ることが、しばしばあります。これはすさまじい対等願望を誘発します。ここでは、エリートに対する敵意とか怒りです。

 こうしたものこそ、トランプやエルドアンやオルバーンが利用しているものです。各国で教育水準の高いエリートから、ぞんざいな扱いを受けている人々の怒りをうまく利用しているのです。これは(選挙などの)結果にもあらわれています。大都市の人はよりリベラルな政党に投票する傾向にあり、田舎や小規模な街の人はポピュリスト政党に投票する傾向にあります。優越願望のほうはと言うと、ドナルド・トランプが完璧な例でしょう。

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