「トランプの最も大きな特徴は何か?」と問うなら、何でも最高でないと気が済まないということでしょう。彼は本質的に最高であることを求めているわけではありません。ただ、全員に頭を下げてほしいのです。これは民衆扇動に通じます。
米国の建国の父たちはこの点を、大いに憂慮していました。「聞こえの良いことだけを言ってこうした恨みを増大させて、民衆の支持を得ることに長けたリーダーが民主主義社会では出現するだろう」と。
他者よりも偉大になりたいと願うリーダーは、平等に扱われていないと感じる人の恨みを活用します。これが民主主義を脅かすのです。彼らは、それをはるか昔の世界で目にしていましたから、米国で同じことが起こることを危惧していたのです。
――あなたは『歴史の終わり』で、トランプ氏にも言及していますね。
フクヤマ:当時の彼は、ただの実業家に過ぎませんでした。「資本主義経済において、他者よりも偉大になりたい」「他者よりも認められたい」という欲求、お金持ちと認められるのは、優越願望の安全な形態かもしれません。より多くの富を生み出せば、巨大な存在の実業家になれるからです。巨大企業を起こせば、より多くの承認欲求を満たしてくれるでしょう。