AERAで連載中の「この人のこの本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。
「NHK短歌」の番組講師を務め「アイドル歌会」の選者として活躍する笹公人さんによる、新しいスタイルの短歌入門。短歌アイドル「明星コトハ」と「笹先生」が、短歌作りの悩みをQ&Aスタイルで解説。穴埋め問題ドリルやエッセイ、「推敲10のチェックポイント」など短歌を作ってみたい、幅広い読者に役立つヒントが満載の一冊となった『シン・短歌入門』。笹さんに同書にかける思いを聞いた。
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〈行き先を「平安時代」と告げたれば光の道に吸われるタクシー〉
『シン・短歌入門』の冒頭に置かれた「笹公人 自選四十首」の最後にある短歌だ。
初の歌集『念力家族』を20代で刊行してから、笹公人さん(48)は短歌の可能性を広げてきた。「アイドル歌会」、和田誠さんとの『連句遊戯』などコラボレーションも多い。
本書は「短歌アイドル・明星コトハ」と「プロデューサー・笹P」という二人の掛け合いで、初級編、中級編、上級編と進む。「シン・短歌ドリル」に挑戦すると、読者も短歌が自分事になるだろう。本文で紹介されている短歌や書籍も多く、ポップな設定だが内容は本格的だ。
「本書には『NHK短歌』のQ&Aを52問、収録しました。今まで大学やカルチャーセンターで短歌を教えてきて、多くの人が持つ疑問や初心者が陥りやすいミスもわかってきましたから。本全体では段々とステップアップして、経験のある方にも役立つように意識しました」
10年ほど前から、笹さんは土屋文明記念文学館の学校連携事業として、群馬県の小中高校などで短歌の授業をしている。
「そこでの経験から『こういう教えかたならば小学生にも理解しやすい』という蓄積もできました。短歌の『型』に子どもの感性が入って、いい歌ができるんです」
五七五七七で表現しているだけだと、動詞の多い日記のような作文になってしまう。そこで「動詞は三つまで」「風景と自分の思いをセットで表現するのが短歌の型だよ」と教えると、子どもたちの表現がぐっと変わるそうだ。