大人になってからも、会社の上司には文句ばっかり言ってるし、良い子ではないですね。でも、昔の抑圧されていた自分を取り戻している感じがするので、そういう自分は嫌いじゃないです。この社会は頑張れば報われる社会ではないけど、せめて自分の手の届く範囲だけは我慢せずにいられる環境にしたいなと思っています。
エムコさんは、幼少期の自分が選べなかった環境ではつらかったけど、今は友達やオットさん(※夫)や、最近生まれたお子さんに囲まれて、とても幸せそうです。自分が自分らしくいられる心地よい場所をつかみとった姿は、読者のみなさんにとっても希望になるはずです。
≪私には物心ついた時から自分の爪をむしる癖があった。ストレスが溜まると爪をバリバリ剥がしたり噛んだりし、痛みを感じた時に落ちつくことができた。「皮膚むしり症」と言うらしいが、そんな病気だと知ったのは大人になってからだった。~中略~ 「これから、ネイルを楽しめるようになるといいね」 彼(※夫)なりの『もうしないでほしい』の言葉だったのだろう。そんな彼の姿を見た時、ストレスが溜まっても自分だけで抱えるのはやめようと思った。自分の抱えきれないものは捨てたり、誰かに持ってもらったりしてもいいのだと知った。痛みではない自分の慰め方を知った時、私は爪をむしることをやめた。その年のクリスマス。オットはCHANELの包みをプレゼントしてくれた。中には4色のマニキュアが入っていた。「エムコに似合うと思った色と、俺の好きな色を選んだ」 オットが好きな色は淡いパステルブルーだと初めて知り、私もその色が大好きになった。/「パステルブルーの指先」≫
(AERA dot.編集部・大谷百合絵)