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 3月8日の「国際女性デー」にちなみ、紹介したい本がある。今、20代や30代の女性たちを中心に共感を集めるエッセイスト・潮井エムコさんの初の著書『置かれた場所であばれたい』。刊行を手がけたのは、家族との関係や社会のなかで「生きづらさ」を感じ続けてきたという女性編集者(27)。どんな環境であっても面白がり、「私らしく大あばれする」潮井さんの姿を、読者に届けたいという。

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≪エムコは激怒した。必ず、かの邪知暴虐の母から逃げねばならぬと決意した。初めて家出をした時のことはよく覚えている。あれは私が4歳の時だった。確か母と揉めて、彼女という存在にほとほと愛想が尽きた私は、幼いながらも「この人とはもうやっていけない」と悟った。これほど馬が合わないのならやむなし。この家は母に譲り、私が身を引こうじゃないかと、母方の祖父母宅に行くことを決意した。/「4歳の家出」≫

――エムコさんのエッセイを書籍化したいと思った理由は?

 全体的に面白おかしいトーンで書かれているんですけど、幼少期にお母さんとうまくいかなくてしんどかったっていう話が多くて、親近感をおぼえたんです。

 私の場合は父親がとにかく怖くて、よく怒鳴られていたので、お父さんが喜んでほしいことは私も喜ばなきゃって思っていました。おかげで、きょうだい3人とも人の顔色をうかがうところがあって、同じところで人格が歪んだなと。

 そうやって親との関係の中で傷ついてきた人に向けて、最初は家族をテーマにした本にしようと企画書を作りました。でもエムコさんは、「小さいころのつらい経験はあくまでも自分の人生の一部で、そこだけを切り取らないでほしい」という意向だったので、家族の話以外の楽しいエピソードも増やして本にまとめました。
 

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こんな世の中で、子どもは産みたくない