管理職の態度を変えることで、部下のメンタル不調が予防できる

 発症予防のためには、管理職の部下に対する態度にも注意が必要です。

「管理職の職務は部下に仕事を遂行してもらうことです。怒鳴り散らす、部下に責任を押しつける……。こんな態度では、人はついてきません」(同)

 川村医師は「管理職のあるべき態度」として、「笑顔で接する」「話をよく聞く」「部下の仕事の結果について、よかった点と悪かった点の両方を述べる」「発する言葉を選ぶ」「ゴールを設定する」「人を診る」「オレ流を押しつけない」「記録を残す」といったことを挙げています。

 日本産業精神保健学会副理事長で精神科医として職域メンタルヘルスの研究をおこなっている北里大学大学院産業精神保健学教授の田中克俊医師は、「不安や心配を抱えている部下を落ち着ける一番の特効薬は、相手の話をしっかり聞くことです。『話を聞いてもらえている』と感じることで、次第に落ち着いて物事を考えられるようになり、問題解決に向かえるようになるのです」と話します。

「話を聞くポイントは、相手の感情をしっかり追うこと。部下の話の内容には、思い込みや事実と違うことも含まれるかもしれませんが、部下が訴える感情にうそはありません。事実関係の確認や安易な励ましは後回しにして、まずは部下の気持ちにあいづちをうち、『それは不安だったね』『つらかったんだね』などと返してあげましょう。そうすると部下は『そうなんです』と答えてくれるでしょう。人は、相手の話に自分が『そうなんです』と答える会話を続けていると、次第に相手への警戒心が薄れ『この人は自分の話をよく聞いてくれる人だ』と認識することが知られています」(田中医師)

 こうして、相手が落ちつきを取り戻し、互いのコミュニケーションがオンになったところで、部下が抱える問題解決の話に入ります。その際には、「『あなたに問題があるのではなく、問題が問題なのだ』という前提で、問題を外在化し、『一緒に解決策を考えよう』という姿勢で話をすすめていくことが大事です」(同)

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