田中医師は、組織の公平性、公正性を高めていく、「フェアマネジメント」も推奨しています。

「海外では組織公正性についての研究が盛んにおこなわれており、『わたしの上司はフェアだ』と答える人が多い職場ほど、部下の仕事に対するモチベーションが高く、職場のストレスレベルや離職率が有意に低いことがわかっています。我々の研究でも、管理職向けのコミュニケーション教育やフェアマネジメント教育が、組織マネジメントや部下のメンタルヘルス向上に有効であることが示されています」

 フェアマネジメントは決して難しいものではありません。

「仕事の割り当てや評価、情報の与え方、対人関係において、普段からどういう態度行動がフェアかという意識を持つだけでも違ってきます。部下たちとのやり取りの中で『こうするほうが公平だよね』と言葉に出すようにするのも良いかもしれません。言葉には人を変える力があります。使っているうちに、自然とフェアな態度が増えていくようになるものです」(同)

 たとえ上司が部下に厳しい評価や指導をして、部下が一次的にネガティブな気持ちになったとしても、上司にフェアなイメージを持っている場合には、理不尽さや怒りを感じることなく、比較的早めに受け入れることができるということです。

「気をつけたいのはこのような管理職こそが、上司や部下との間にはさまれて、強いストレスを感じやすいということです。管理職とはいえ、会社の職務上、部下の管理をおこなっているのであって個人の責任ではありません。割り切りが必要ですが、それでも不調を感じたら、産業医などに早めに相談をしてください」(川村医師)

(文・狩生聖子)