羽田空港第2ターミナルから、事故があった滑走路を望む=東京・羽田空港、米倉昭仁撮影

 米連邦航空局(FAA)によると、昨年度、米国で発生した滑走路誤進入は1760件。そのうち、パイロットに起因した航空機の誤進入は1070件で約61%を占める。管制官によるものは338件(約19%)、車両や人員の進入は308件(約18%)、その他は44件(約3%)だった。

 昨年までの10年間に発生した滑走路誤進入のうち、99%は衝突を回避するのに十分な時間と距離があった比較的軽微なインシデントで、事故寸前の「カテゴリーA」は全体の0.4%だった。

「世界的に見ると、滑走路誤進入というのは航空インシデントのなかではダントツの1位なんですよ。ですから、米国や欧州の航空当局は滑走路誤進入を減らす対策を必死になって進めています」

 と牛草さんは語る。

 背景にあるのは増え続ける航空需要と、過密化が進む空港だ。そこでの重大事故を防ぐには「ヒヤリハット」と呼ばれる小さなインシデントの原因究明と対策が欠かせない。欧米では、滑走路誤進入を起こした際には必ずレポートの提出が求められ、それによって免責される仕組みがあるという。
 

日本で少ないのは「不自然」?

 では、日本における滑走路誤進入の発生状況はどうだろう。国土交通省によると2019年は39件、20年は23件、21年は25件と、米国に比べて極端に少ない。

 その理由について牛草さんは、日本人は規則を忠実に守ろうとする意識が諸外国に比べて高い傾向にあること、適切な社内教育の効果などで滑走路誤進入への注意力が高いことを挙げる。

 しかし、その一方で、

「日本の航空業界全体にいえることですが、何かミスをしてしまった場合、重大なものでなければ報告をためらってしまう体質があります。組織内で何らかのペナルティーが科せられる、もしくは科されるのではないかという不安がありますから。こうした文化の背景もあるため、件数を単純に比較するだけでは見えてこない部分があると思います」

 と牛草さんは指摘する。
 

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