事故を受けて9日、航空局は「航空の安全・安心確保に向けた緊急対策」を公表した。そこには「航空機の離陸順番を示す情報の提供を当面停止」するという一文がある。
事故当時、管制官は海保機に「ナンバーワン。C5上の滑走路停止位置まで地上走行してください」と指示し、海保機は「滑走路停止位置C5に向かいます。ナンバーワン。ありがとう」と応じた。
事故後、複数の「専門家」は「管制官が被災地支援に向かう海保機の離陸を優先させたため、ナンバーワンという言葉を使ったかもしれない」とし、それが事故に結びついた可能性を指摘した。
しかし、牛草さんの目には、極めて不自然な推察だと映る。
「あのとき、誘導路には出発を待つデルタ航空の旅客機がいました。大型のジェット機が先に離陸すると後方に乱気流が発生するため、その後3分間は離陸ができない。そのため、海保機のようなプロペラ機に『ナンバーワン』を与えて優先的に離陸させ、スムーズに滑走路を運用する、ということが日常的に行われています。日本の現役のパイロットであれば誰でも知っていることです。今回の事故に該当するかはわかりませんが、より効率的に滑走路を運用するというやり方は世界の混雑空港では一般的だとはいえます」
緊急対策は現場を知らない有識者によってまとめられ、これまでと同様に現場の声が吸い上げられていないと感じる。
12日、国交省は有識者らで構成する対策検討委員会を設置した。パイロットと管制官に対する注意喚起システムの強化などを検討し、滑走路への誤進入対策を講じるという。
「欧米のように、現場から事故を防止する取り組みを10年以上前から航空局に訴えてきましたが、有識者の意見を優先する日本の航空行政の体質は今回の事故後もまったく変わりません。本当に、なぜなんだ、と思いますよ」
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)