形骸化する滑走路安全チーム

 そんななか、国際民間航空機関(ICAO)は滑走路誤進入を防止するため、空港ごとに「Runway Safety Team」を設けて運用することを推奨してきた。これは、空港管理者、航空機オペレーター、パイロット、管制官などのメンバーが定期的に集まり、滑走路の安全運用について話し合うものだ。

 これまで、牛草さんは諸外国の滑走路誤進入防止の取り組みを学び、国交省航空局にも伝えてきた。しかし、反応は鈍いままだという。

 日本でもRunway Safety Teamが設けられたものの、成田、羽田、伊丹、沖縄の4空港にとどまるうえ、会合は形式的なものが多く、本質的な議論はあまり行われていない印象があるという。

「パイロットが出席するといっても、航空会社から指名されたパイロットだけです。羽田空港には海保の航空基地や報道機関の航空部が置かれていますが、これらのパイロットは参加していません」

 滑走路の安全は航空局と航空会社に依存する、という航空行政の意識は頑なで、現場の声を吸い上げる仕組みが希薄という。

「そもそも、日本には滑走路誤進入に対する包括的な指針さえないんですよ。08年3月に『滑走路誤進入防止対策会議取りまとめ』が公表されましたが、この会議にはパイロットはほとんど加わっていません。提言がどれほど事故防止に役立ってきたのか、疑問です」
 

現場を知らない専門家が主導

 牛草さんは今回の事故によって航空行政の意識が変わるのでは、という淡い期待を抱いた。しかし、それはすぐに裏切られた。
 

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現場の声が吸い上げられない「対策」