炎上する日本航空の旅客機=1月2日午後6時33分、東京・羽田空港

 東京・羽田空港で1月2日に起きた、日航機と海上保安庁の航空機が滑走路上で衝突した事故。滑走路の誤進入は決して珍しい事故ではなく、日本では数少ない事故対策の専門家は「いつかは大きな事故が起こると思っていた」と語る。その背景には、事故防止に真剣に取り組んでこなかった日本の航空業界の体質があると指摘する。

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 事故が起きたのは、元日に発生した能登半島地震で世間が騒然としていた1月2日の夕方。被災地に届ける支援物質を積んだ海上保安庁の航空機が滑走路に進入し、同じ滑走路に着陸してきた日本航空の旅客機と衝突、炎上したのだ。JAL機の乗員・乗客379人は無事だったが、海保機に乗っていた5人が死亡した。

 事故直後から、「通常ではあり得ない事故だ」という声が多くの「専門家」から上がった。

 しかし、パイロットや管制官ら約1万人が所属する日本最大の航空業界団体「航空安全推進連絡会議(JFAS)」の事務局次長を務める一方、日々ボーイング787型機を操縦する現役パイロットの牛草祐二さんの見方は、まったく異なっていた。

「滑走路の誤進入は頻繁に起きている、ありふれたインシデント(事象)なんですよ」
 

米国では年間1760件の誤進入

 昨年2月4日、衝突には至らなかったものの、今回の事故とよく似た事案が米テキサス州・オースチン空港で発生していた。

 離陸しようとするサウスウエスト航空の旅客機に覆いかぶさるように、フェデックスの貨物機が着陸してきたのだ。衝突寸前のところで貨物機は上昇し、事故は回避されたものの、2機の高度差は100フィート(約30メートル)以内まで接近した。

 そのため、羽田空港の事故は「他人事ではない」と、米国でも大きく報じられた。
 

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日本では滑走路の誤進入は少ない?