「狼煙 ~NOROSHI~」店主の中村幸司さん。高校時代からキックボクシングのプロとして活躍していたが、今は埼玉でラーメン屋を5店舗展開する(筆者撮影)
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 日本に数多くあるラーメン店の中でも、屈指の名店と呼ばれる店がある。そんな名店と、その店主が愛する一杯を紹介する本連載。今回は魚を使ったラーメンで人気を博する「寿製麺 よしかわ」の店主・吉川和寿さんの愛する名店「狼煙 ~NOROSHI~」をご紹介する。

■ファイトマネーだけでは食べていけない 格闘家からラーメン店主に転身

 埼玉新都市交通伊奈線・鉄道博物館駅、または東武アーバンパークライン・北大宮駅から10分ほど歩いたところに、つけ麺の名店「狼煙」(さいたま市北区東大成町)はある。決してアクセスのいい場所ではないが、自慢の濃厚つけ麺を求めて、毎日行列ができている。

「狼煙」のつけ麺(並)は一杯950円。具はチャーシュー、ネギ、刻みタマネギ、ナルト、ノリ。麺は極太ストレートの自家製麺を使う(筆者撮影)

 動物系強めの濃厚豚骨魚介スープに魚粉でさらに魚介をブースト。店の2階で打つ自家製麺は全粒粉入りで、小麦の甘みが特徴だ。コシもしっかりあって、おいしい麺に濃厚なスープがこれでもかと絡む。

 店主の中村幸司さんは埼玉県与野市(現在のさいたま市中央区)生まれ。高校時代からキックボクシングのプロとして活動していたが、高校を卒業して建築業の仕事に就くことになる。もう一度格闘技をやりたいと思っている時に、たまたま高田馬場にある人気ラーメン店「俺の空」の求人を見つける。店主の嶋本宗薫さんはグレコローマンレスリング関西の元チャンピオンで、そんな嶋本さんに憧れた中村さんは「俺の空」でアルバイトをすることになった。21歳の時だった。

「俺の空」は2001年にオープンした名店で、豚骨魚介ブームの火付け役のお店のひとつとしても知られている。結局、中村さんは5年間「俺の空」で働くことになるが、中村さんが在籍していた02年から07年は大ブームの最中でとんでもない忙しさだったという。

「オープン前から大行列で、開店同時に整理券を配布して売り切れなんていう日が続きました。入るまでこんなとんでもない店だということは知らず、入ってびっくりという感じでした。店主の嶋本さんに憧れ、『こういう人になりたいな』という思いがどんどん強くなっていったんです」(中村さん)

 はじめはアルバイトだったが、修業が本格的になるにつれて、中村さんはラーメンで独立という道を考えるようになる。当時、埼玉県には東京で流行っているようなラーメン店はなかなかなく、チャンスだと思ったのと、格闘技のファイトマネーだけでは食べていけないという現実に気づいたのである。

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中途半端にはしたくなかった