そして、その法則性を数式化したものがこの数式であり、この数式に基づく経済学理論のことを「プロスペクト理論」と呼びます。
プロスペクト理論は、1979年にカーネマンとトベルスキーにより提唱され、カーネマンはその業績により2002年にノーベル経済学賞を受賞しています。
なぜ心理学者であるカーネマンがノーベル経済学賞を受賞したかというと、プロスペクト理論が、人間がどう損得の判断をして行動するかを膨大な心理学データに基づいて理論化したものであり、経済学の研究にそのまま応用できるものだったからです。いわば、心理学と経済学を結びつける懸け橋のような理論だったわけです。
この理論をきっかけにして、心理学と経済学を融合した「行動経済学」という新しい学問分野が誕生しました。
プロスペクト理論とそれ以前の経済学理論の最も大きなちがいは、プロスペクト理論が人間の不合理な側面も含めて理論に取り入れたという点です。
それまでの経済学では、人間は常に合理的な存在であり、経済学的に見て最適な判断を常に下すことができるとみなされていました。しかし現実の人間は、先ほどの例で見たように不合理な判断をしてしまうことが頻繁にあります。こういった不合理な側面も含めて説明できるのがプロスペクト理論です。