※写真はイメージです(Getty Images)

 従来の経済学では、「人間はいつも合理的で経済的に見て自分にとって有利な判断を行うことができる」とされていた。ところが、1990年代以降に急速に発展してきた行動経済学によると、「人間はだれしも、進んで損したいとは思っていないが、客観的に見れば損な行動をとってしまう」ということが分かってきた。冨島佑允氏の新著『東大・京大生が基礎として学ぶ 世界を変えたすごい数式』(朝日新聞出版)から一部を抜粋、再編集し、人間が損を避けるために、リスクを取ってしまう心理の法則“プロスペクト理論”を紹介する。

【図】人間の損得勘定を表す数式はこちら

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リスクに近づくとき、遠ざかるとき

 心理学者のダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーは、人間をホモ・エコノミクス(完全に合理的な存在)とみなす当時の経済学に疑問を抱いていました。そこで、経済学の大前提であるホモ・エコノミクスが誤った考え方であることを示すため、大規模な心理学実験を行いました。

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冨島佑允

冨島佑允

●冨島佑允(とみしま・ゆうすけ) 1982年福岡県生まれ。京都大学理学部卒業、東京大学大学院理学系研究科修了(素粒子物理学専攻)。MBA in Finance(一橋大学大学院)、CFA協会認定証券アナリスト。大学院時代は欧州原子核研究機構(CERN)で研究員として世界最大の素粒子実験プロジェクトに参加。修了後はメガバンクでクオンツ(金融に関する数理分析の専門職)として各種デリバティブや日本国債・日本株の運用を担当、ニューヨークのヘッジファンドを経て、2016年より保険会社の運用部門に勤務。2023年より多摩大学大学院客員教授。著書に『日常にひそむ うつくしい数学』(小社)、『数学独習法』(講談社現代新書)、『物理学の野望――「万物の理論」を探し求めて』(光文社新書)などがある。

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