従来の経済学では、「人間はいつも合理的で経済的に見て自分にとって有利な判断を行うことができる」とされていた。ところが、1990年代以降に急速に発展してきた行動経済学によると、「人間はだれしも、進んで損したいとは思っていないが、客観的に見れば損な行動をとってしまう」ということが分かってきた。冨島佑允氏の新著『東大・京大生が基礎として学ぶ 世界を変えたすごい数式』(朝日新聞出版)から一部を抜粋、再編集し、人間が損を避けるために、リスクを取ってしまう心理の法則“プロスペクト理論”を紹介する。
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リスクに近づくとき、遠ざかるとき
心理学者のダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーは、人間をホモ・エコノミクス(完全に合理的な存在)とみなす当時の経済学に疑問を抱いていました。そこで、経済学の大前提であるホモ・エコノミクスが誤った考え方であることを示すため、大規模な心理学実験を行いました。