未練がましい人間、いさぎよいAI
著者は資産運用の仕事をしていますが、同じことが資産運用の世界でもよく見かけられます。たとえば、株式投資では、ある企業の株を値上がりすると思って買った後、思惑が外れて値下がりした場合はすぐに売った方がよいとされます。予想が外れたことを潔く認め、損失が大きくなる前に手を引いた方がよいということです。
このような判断は、損が大きくなる前に切り捨ててしまうということから「損切り」と呼ばれています。
しかし、いざこのような事態に直面すると、多くの人はなかなか損切りができません。
「今はたまたま下がっているだけで、しばらくすると上がるのではないか。もし損切りしたあとに値上がりが始まったら、くやしくてたまらないじゃないか……」などと考えて損切りができず、結局、損失が大きくなってしまうケースが多いのです。
これも、損失についてリスク愛好的(株を持ち続けるという、リスクの高い選択肢を選んでしまう)な、すなわち不合理な判断をしてしまっている状況です。
金融機関に勤める資産運用のプロでも、こういった心理バイアスの影響を受けて損失を拡大させてしまうことがあります。
そのため、金融機関は多くの場合、損失が発生した際に従うべきルールを事前に定め、取引を行う人すべてに強制しています。たとえば、「損失が20%に達した場合は損切りを行う」といったルールです。そうやって会社の方針としてルールを強制しておけば、迷うこともないからです。