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 ちょっと話が横にそれるが、「才能」が何度も語られた。才能ない=スズ子、桜庭。才能ある=大和、秋山、そしてもう1人の同期・白川リリー(清水くるみ)とされていた。ダンスや歌は才能が大きいかもしれないが、それにしても連呼しすぎだ。そんなふうに見ていた。だけど、働いているとどうしても自分を値踏みすることはしてしまいがちだ。そのことが言いたいのかもしれないなーと思ったりもした。

 桜庭は1週間、休み続ける。スズ子が「家に行ってみいひん?」と白川を誘う。「ほっとき。あの子は人が励ましてどうこうなる人間ちゃうって」が白川の答え。意地っぱりというべきか、誇り高いというべきか。白川、桜庭をよく見ていて、これも才能か?

 久々にUSKに来た桜庭が、スズ子らに「うち、梅丸やめるわ」と言った。いろいろあり、大和が桜庭に向き合う。「あなたは逃げている、秋本さんではなく、自分から逃げている」と言う大和に、スズ子が割って入った。逃げてもいい、やめてもいい、「だって勝てんもんな。ワテも絶対勝てません、大和さんにも、リリーにも」と。

 ではなぜ続けられるのか、と桜庭が小さい声でスズ子に聞いた。好きなのだ、どんなに下手でも歌って踊るのが好きなのだという答えに桜庭が言った。「そんなん、ワテかて好きや。好きに決まってるやろ。せやけど、悔しくてしょうがないねん。抜かれるのがみじめやねん」。今度は大きい声だった。

 「つらいなー、せやけどな、2人で抜かれよ。そんでいつか見返したろ」というスズ子の言葉に、桜庭はやめるのをやめる。演出を任され、厳しく指導をしてきた大和も頭を下げてこう言った。「みんなで楽しくやりたい、ここを楽しい場所にしたい、やめないでほしい」。仏頂面とクールビューティーがスズ子に触発されて、自分の本音を言葉にした。

 ここから一転、「桃色争議」になった。梅丸本社が歌劇団に「賃金カット、人員削減」を通告したのだ。レビューガールとしての誇りがあるという大和。お客を大切にしないのはおかしいと主張する男役トップの橘アオイ(翼和希)。悩むスズ子は社長の大(升毅)に「嫌なことは嫌とちゃんと言える人間にならんといかん気がしますねん」と言い、大和が「自分を大切にできない人間は、会社とお客さまを大切にできません」とストライキ宣言をする。笑いの要素もはさみながら、堂々と真っ当に生きる女性像を描く。「ブギウギ」は、よく練られた朝ドラだとはっきりしてきた。

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蒼井優の悲しさが伝わる「なー」