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  事態を見守りながら思ったのは「USKは良い職場だなー」ということだ。思ったことをすぐに口にできる人もいれば、それをなかなかできない人もいる。桜庭だけでなく大和も後者で、そういう大和を支えていたのが橘だった。スズ子が桜庭を支え、橘が大和を支える。お互いが支え合い、本音を語っていく。こういう職場は人を強くする。そんなことも思った。

 争議の結末は、団員が申し入れた(ストライキ中止のための)条件はすべて受け入れる、その代わりに大和と橘は歌劇団をやめるというものだった。「条件なんか何でもええから、大和さん、おってくださいよ、橘さんもおってくださいよ」とスズ子は子どものように地団駄を踏んでいた。大和も「悔しいなー、やめたくないなー」と言った。大和の悲しさが伝わる、蒼井さんの「なー」だった。

「ブギウギ」NHK総合の初回放送は毎週月曜~土曜の8:00から。(c)NHK

 スズ子は「嫌やー」と泣き叫んだ後、お風呂につかっていた。実家の広い銭湯に1人でつかり、USKのテーマソング「四季の宴」を歌っていた。一筋の涙を流し、少し音程を外しながら。<めぐりめぐる、季節を風は、さわやかに吹き渡る……>。泣き叫んでいるシーンでは泣かなかった私だが、ここで涙がこぼれた。スズ子の内省的な一面に触れて、心が動いた。

 次に描かれたのが、戻ってきた桜庭だった。賃金カットが発表された時、「今までのお給料でもほんまは厳しいねん」と去っていたのだ。「和希ちゃん、おかえり」とスズ子が飛びついた。「ただいま」と桜庭が笑った。職場で流した涙は、職場で笑顔に変える。それしかないよねなどと思いながら、桜庭とスズ子、どちらも抱きしめたくなった。