(c)NHK
この記事の写真をすべて見る

  ヒロイン・福来スズ子(趣里)の梅丸少女歌劇団(USK)同期の1人に桜庭和希(片山友希)がいる。大好きだ。大和礼子(蒼井優)へのリスペクトとは違い、桜庭を見るたび「わかる、わかる」と抱きしめたくなる。マイ・ナンバーワンご贔屓だ。

 「わかるポイント」その1は、いつでも仏頂面というところだ。警戒心が強い、心を開くのが得意でない、従順そうに振る舞うことへの抵抗感……一方的に推測して、納得している。そして最大の「わかるポイント」は、彼女の不器用さ。その姿を見ると、自分が重なって抱きしめたくなる。

 桜庭、ダンスが下手なのだ。花咲歌劇団から移籍してきた後輩の秋山美月(伊藤六花)に「桜庭さん、もう少しテンポ、上げられませんか」と言われてしまう。演出を任され大いに張り切っている大和も秋山に模範演技をさせ、「特に桜庭さんは同じポジションだから、秋山さんの踊りをお手本にして」と言ったりする。そして桜庭、ダンスが不器用なだけでなく、なのか、ダンスが不器用なように、なのか、とにかく生き方も不器用だ。

(c)NHK

 桜庭が大和に名指しされた稽古の後、スズ子は「和希ちゃん」と声をかける。一緒に残って練習しないか、それともうちに寄って帰らないか、と誘うのだ。「かまわんといてよ、大きなお世話や」。それが桜庭の反応だった。あんたは娘役だから秋山の才能と勝負しないで済むじゃないかと言って、帰っていく。ややあって、暗くて狭い道が映る。桜庭が稽古着で踊っている。

 どうせ稽古するのなら、スズ子とすればいい。そう桜庭もわかっているだろうと思いながら見る。だけどそうしない、できない桜庭が愛おしい。アップになる。仏頂面だ。思い悩んでいる様子がありありと見てとれる。「翌日、桜庭和希が稽古を休みました」とナレーションが重なる。

次のページ
自分を値踏みしてしまいがち