価格の動き方は異なり、【1】のケースでは市場価格は低下しやすくなり、【2】のケースでは逆に上昇しやすくなろう。
【2】はアメリカやカナダなど穀物生産大国で起きており、こうした国々は、輸出することで国内の過剰な供給を処理しているが、他の国や世界的な範囲で見た場合は【1】、つまり消費量に対して生産量が不足するケースである。自由な市場経済を前提にすると、食料の市場価格が低下しやすくなることを生産側が静観したまま生産を増やし続けるのかどうか、という問題がある。もし生産側がこれをいやがると、食料不足は解消されない可能性があろう。
食料は必需品、他に代わるべきものがないので、経済学では初歩的な需要量と供給量が一致するところで成立する自然価格といわれるものが成立しにくいのである。というのは、価格が下がりそうになると生産側は供給をコントロールし、決まりかかった自然価格が再上昇し、その結果生産を増やすと次には価格が下がる方向に動く。このように自然価格は落ち着かないながらも、生産側に有利なように、ということは常に供給が需要を下回る傾向を維持するということに落ち着くのが傾向というものだ。
これは市場経済の理論的なジレンマであり、食料不足は果たしてこのジレンマを乗り越えて解消に向かうことができるだろうか? このジレンマを解消する方法は一つ、それは消費側に立った政府備蓄を十分に持つこと、そして市場の動きに応じて迅速な販売と購入ができる体制をつくることであろう。穀物価格高騰下において、在庫を増やす行動に出た主要生産国の行動はFAO(国連食料農業機関)など国連機関が介入して調整できる体制づくりが課題である。