振戦は、じっとしているときに片側の手や足に起こりやすく、周りも気づきやすい症状です。進行するとやがて反対側にも広がります。なかには首やあごがふるえるという人もいます。あわてたり緊張したりすると、ふるえは大きくなります。ふるえは有名な症状ですが、ふるえが出ないタイプの人も少なくありません。
動作緩慢というのは動きが遅くなる症状で、そのため何をするにも時間がかかるようになります。また、動き始めるのに時間がかかってすくんでしまうこともあります。筋強剛は筋肉がこわばり関節の動きが硬くなる症状で、手足の動きがぎこちなくなります。体幹の筋肉がこわばると背中が曲がったり姿勢が前かがみになったりします。姿勢保持障害は、発症から5~10年経ってから出てくる症状です。立ち上がったときや歩行時、少し体勢をくずしただけでバランスがとれず、転倒しやすくなります。
自分や家族にどんな症状があるとき、パーキンソン病を疑えばいいのでしょうか。専門医の少ない地域での医療相談にも取り組む国立病院機構宇多野病院臨床研究部長の大江田知子医師は、次のように話します。
「周りから最も気づかれやすい症状は、ふるえです。例えば、テレビを見ているときなどに、『片側の手や足がふるえているよ』とご家族が教えてくれます。パーキンソン病の場合、初期には左右どちらかに症状が出るのが特徴です。動作緩慢や筋強剛は少しわかりにくいかもしれません。卵を溶いている途中で箸を持つ手が止まってしまう、シャンプーしているとき片方の手が止まってしまうと訴えて受診する人もいます。着替えに時間がかかるようになった、前かがみでちょこちょこ歩きになったといって来る人もいます。表情が少なくなり声が小さくなったのを気にして受診された人もいました」
散歩を習慣にしていた夫婦の場合では、同じ速さで並んで歩いていたのに、だんだん妻が遅れるようになり、「速く歩けなくなったね」と夫が気づいた例もあるそうです。
パーキンソン病では、「非運動症状」といって、体の動き以外にもさまざまな症状が起こります。例えば、便秘、嗅覚(きゅうかく)の低下、「レム睡眠行動異常症」は、運動症状より前に起こりやすいとされています。レム睡眠行動異常症とは、眠っている間に夢を見ながら大声を上げたり手足をばたばた動かしたりする症状です。ほかに、不安やうつ症状、睡眠障害、頻尿、立ちくらみ(起立性低血圧)などもよく合併します。病気が進むと、幻視(部屋に子どもや動物がいると言い張る)が表れたり、もの忘れが目立ったりしてくることもあります。