「まるで鏡だな……」

 子規の句を通して、見えないものがいくつも見えてくる体験をしたこの対談は、俳句は己の鏡であることをあらためて教えてくれたのである。

 それも、ひとえに夏井いつきさんのおかげに他ならない。記憶が定かであれば、初めてお会いしたのは和食の料理屋で、対座して一通りの挨拶を交わしたのであるが、小生の第一印象は「え? 可愛い!」であった。

 声と笑顔としぐさが相まってその可憐さがあっという間に小生を取り込んだのである。

 小生は、この本を出すにあたりこれから幾度か対談でお会いするのであるから、似非者であってはならない。分からないこと、知りたいこと、知っていることをさらけ出し、生徒になろう。そう心に決めたのである。そして時を忘れて語り合い、日本酒の喉越しなめらかに珠玉の時を過ごさせていただいたのである。ちなみに小生の特技はどんなに酒を飲んでも翌る日、全て憶えていることであるが、時としてそれは天国にも地獄にもなる。「あっ、またやっちゃった。ウーム……」、これは、昨夜の出来事の失態を後悔する時であるが、酒の所為にはできない。記憶がある以上は誤魔化すことができないのが小生の性分だからである。幸いにして夏井先生と酒を酌み交わしながらの艶俳句対談は楽しく有意義、脱線も含め好スタートを切ったのである。

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それは、『よもだ』である