「退職を機に、数年ぶりに実家に戻りました。両親はすごく歓迎してくれました。最初はかなり平和に過ごしていて、『失業手当の受給期間が終わったら、また働こう』と思っていました。ですが、受給が終わっても動きだすことはできませんでした。『初めて自分の意思でなにかをした』のが、僕にとっては退職だったからです。中学受験も大学進学も就活も、僕は周囲がやっていることを踏襲していただけでした。しかし退職は、初めて自分の意思で選んだ。だから、いざ決断した後に、どんな次の一歩を踏めばいいのかわからなくなってしまったんです」
最初は歓迎してくれていた父も、次第に態度を変化させた。竹中さんも反抗するかのように、両親とは一切口をきかず、トイレに行く以外は自分の部屋から出なくなっていった。結局、最初の引きこもりは1年8カ月に及んだ。
その後、会社員時代の貯金が尽きかけたことで一念発起し、平日は職業訓練に通い、土日は派遣の仕事をするように。そんな日々を4カ月送ったのち、とある人材派遣会社のコピーライターの仕事についた。
ただ、その会社はいわゆるブラック企業だった。数カ月で退職し、再び実家に引きこもった。
転機となったのは、2度目の引きこもりの後に、若者支援の仕事についたことだった。竹中さんが28歳のころだった。