「ギフテッド」の竹中辰也さん(画像=本人提供)

 ギフテッドと呼ばれる人たちがいる。高い知性や能力を発揮する一方で、発達の偏りや気性の激しさなど、さまざまな困難を抱えるケースも多い。好評発売中の書籍『ギフテッドの光と影 知能が高すぎて生きづらい人たち』(朝日新聞出版)では、そんなギフテッドたちの声を取り上げてきた。社会福祉法人で不登校・ひきこもり支援を行う竹中辰也さんも、IQ132を有する当事者だ。【前編】では自らの高い知能に気づかず、周囲に合わせようとして疲弊する学生時代の苦悩を聞いた。自分は普通よりも能力が低いんだ……そんな思いにとらわれ社会人では2度の引きこもりを経験した。だが、現在は「楽しく、自分らしく過ごせている」という。【後編】では引きこもりから脱出できたきっかけを取材した。

【写真】関西の有名私立中高一貫校に通っていたころの竹中さん

※【前編】<小5で広辞苑を読破した「ギフテッド」男性を苦しめた「強すぎる想像力」 有名私立中高に入るも社会人では引きこもりに…>より続く

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 同志社大学を卒業後、紳士服を取り扱うアパレル系企業に入社した竹中さん。希望した人材開発の仕事に携われたが、入社から程なくしてリーマンショックが発生し、部署が解体された。適性とは異なる販売の仕事で売り上げのプレッシャーをかけられ、顔の皮膚がボロボロになるなど強いストレスを感じるようになった。

 それでもしばらくは耐えて働いたが、結局、会社を辞めた。その後、引きこもり生活に突入した。

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退職は「初めて自分の意思」で決断した