「発達の偏りは特になく、知能の項目は全体的に高スコアでした。周囲より自分が優れているとは思ったことがないので、驚きました。なにかの間違いかと思って、『MENSA』(高IQ団体)の入会テストを受けたところ、入会できたことで現実を受け入れられました。ただそれと同時に『どうしたらいいんだろう……』という気持ちにもなって。『能力が低いから、自分はこんなに困ってるんだ』と思っていたので、いっそのこと『お前はダメな人間だ』って言ってくれほうが楽だったんですよね」
それでも、時間をかけて検査結果に向き合うことは、自分と向き合うことにつながった。
「『自分は今まで、やり方が違っただけなんだな』と思えたのは大きかったですね。例えば、それまでの自分は、他者が抱えた課題でも、勝手に解決しようとする節がありました。『問題が起きている間に、自分だけが解決してしまっている』みたいなことが、学校でも職場でも多かったんですよね。『職場での会議の時に、上司より先に解決策を出してしまう』とか『先生が黒板に問題を書いている間に、答えがわかってしまう』みたいな話です。過去の傾向から類推して答えを出していたわけですが、答えを言うのが早すぎた結果、逆に周りから変な目で見られたりしていたことに気づきました。自分がそれまで周囲に受け入れられなかったのはやり方が間違っていたからで、『会議をきちんとする』『きちんと上に説明する』など、社会通念的に適切なプロセスを踏めばうまくいくとわかったし、実際、その後は周囲とのズレも少なくなりました」